第一次投票 推薦コメントのご紹介⑮
- 10代がえらぶ海外文学大賞実行スタッフ
- 5月17日
- 読了時間: 12分
『エジプト人シヌヘ』
ミカ・ヴァルタリ作、セルボ貴子訳、菊川匡監修、静風社
壮大な人生の物語。
10代のときの主人公には若さ故の自意識から弱さ、そして自分を責めてしまう感情が描かられている。
10代に読んでもらいたい。(文学ラジオ空飛び猫たち)
『わたしたちが起こした嵐』
ヴァネッサ・チャン作、品川 亮訳、春秋社 自分の実感としても思うことですが私たち日本人が侵略者であったことと向き合う機会やきっかけというのは多くないと思います。本作は文学というフィクションの世界を通して今世界で起こっているさまざなな出来事、私たちが生きているノンフィクションの世界への眼差しをより深いものにしてくれたと感じています。痛みと向き合うことは苦しいですが、ひとつひとつと向き合わずして私たちは先へは進めないのではないでしょうか。(つぐみ)
『わたしの人生』
ダーチャ・マライーニ作、望月紀子訳、新潮社
戦争において日本が加害側に立ってしまった事実についての文学作品も当然存在し、読まれて然るべきものです。本作品を読み終えた今でもその考えに改めて変わりはありませんでした。(Yuki)
『ハリネズミ・モンテカルロ食人記・森の中の林』
鄭執作、関根謙訳、アストラハウス
なんだ、この話!が初読の感想。掴めそうで掴めない、共感なんて不要とさえ言われているような気分になりました。読書会では好きな作品がぱかっと分かれました。「ハリネズミ」は映画も観てみたい。(かとうちあき)
『かかし 現代中国文学 少年少女編』
葉聖陶作、福井ゆり子訳、尚斯国際出版社
自然あり教訓あり。古さを感じない、やさしく素晴らしいお話です。それぞれのお話が、今忘れている大切なものを思い出させてくれます。子どもたちがこの本を読んで、物事に関われたら、今よりもっと生きやすくなると思います。食べて読み、お風呂に入って読み、お散歩の後に読んで、読了しました。(おとみさん)
『アウシュヴィッツの小さな厩番』
ヘンリー・オースター/デクスター・フォード作、大沢章子訳、新潮社
悲惨で壮絶な内容だが、文章がとても読みやすく、初めて知るエピソードの数々に一気に読み進めてしまった。過酷な環境の中、馬小屋の干し草に生の匂いを感じ、心が癒やされるシーンがとても印象的だった。(こは)
『理想の彼女だったなら』
メレディス・ルッソ作、佐々木楓訳、書肆侃侃房
「性同一性障害」を知り考える作品、として読み始めました。しかし、その第三者的な視点は覆されます。自分は何者なのか、自分がどのように生きたいのか、誰もが持つ当たり前の葛藤に、さらに周囲の先入観や偏見という恐ろしい壁が立ちはだかる現実を、読みながら、一緒に生きる感覚がありました。(えの)
『アフガンの息子たち』
エーリン・ペーション作、ヘレンハルメ美穂訳、小学館
この本を読んで、アフガンの現状や、福祉国家と言われる北欧、スウェーデンの難民の受け入れなどの実情について、興味を持ってもらえるきっかけになればいいと思います。(ナマステ)
『ジェンダー・クィア 私として生きてきた日々』
マイア・コベイブ作、小林美香訳、サウザンブックス社
作者の10代からの悩みや葛藤が包み隠さず描かれていて、大きな衝撃を受けた。同じように悩んでいる10代の方の支えになる本だと思う。(無記名)
『物語ることの反撃 パレスチナ・ガザ作品集』
リフアト・アルアライール編集、藤井光訳、岡真理監修、河出書房新社
今に必須な本です!
男女比では女性の方が多いようですが、何となく男性の書く文章は思いが深く、女性はドライで皮肉な文章が多く感じました。もちろんどれも良い文章で、彼らが直面していること、理不尽で恐ろしい攻撃に対してもとても冷静に、静かに世界を見つめているような書き方はとても印象深かったです。特にリフアトさんの文章は同世代の大学生たちにも人気があります。ぜひYAにも読んでもらいたいです。(後藤瑞穂)
『夜明けを探す少女は』
ジュリアナ・グッドマン作、圷香織訳、東京創元社
自分は世界を何も知らなかったんだと思わずにはいられなかった。そしてこれは、物語の世界の話ではなく、現実の話なんだと思うと、「真実=正」ではない、ある立場の人にとって都合のいい社会をあがくボーの生き様はかっこよくも儚いと感じてしまう。(あぷ)
『エジプト人シヌヘ』
ミカ・ヴァルタリ作、セルボ貴子訳、菊川匡監修、静風社
古代エジプトが舞台の物語。主人公シヌへの人生は子供の頃から波瀾万丈です。青春時代を医学に捧げますが、悪い女に騙されて一文なしになり、国を離れることに。シリア、バビロン、ヒッタイト、クレタ島など異国を旅します。友情あり、ロマンスあり、戦争あり。夢中になって読んでいると古代エジプトにタイムスリップしたかのような気持ちになれます。かなりの大長編ですが、側には陽気な使用人がいて退屈させません。(ミエ)
『あいだのわたし』
ユリア・ラビノヴィチ作、細井直子訳、岩波書店
夢中になって号泣しながら一気読みした本です。10代の時にこんな本に巡り会えたら…と強く思った一冊です。「石を投げいれると、水面に立つ波のように」広がっていく暴力に、つながりあうことで一緒に抗っていける世界になることを願って、この本を推薦します。(ねこぽん)
『ベル・ジャー』
シルヴィア・プラス作、小澤身和子訳、晶文社
10代で読むにはキケンな本。でもだからこそ読んでほしい。生きることのナイフのような輝きが詰まっている。(森山恵)
『スラムに水は流れない』
ヴァルシャ・バジャージ作、村上 利佳訳、あすなろ書房
日本からは見えない現代インドのこどもの姿が描かれていて、そこにハラハラ物語要素が噛み合っていて面白かった。(つき)
『アフガンの息子たち』
エーリン・ペーション作、ヘレンハルメ美穂訳、小学館
単身で母国を逃れてきた難民児童たちを受け入れる施設が舞台です。そこに暮らす3人のアフガニスタンの少年たちは十代。語り手レベッカも歳は彼らとさほど変わりませんが、少年たちをケアする立場にあります。描かれる出来事とともに、とても静かな語りの中に立ち現れるきらめきや激情が忘れられません。(無記名)
『わたしたちが起こした嵐』
ヴァネッサ・チャン作、品川亮訳、春秋社
第二次世界大戦中のマラヤ(マレーシア)で、日本軍のスパイ・フジワラに心惹かれ、極秘裏に協力することになったマレー人女性セシリーと、彼女の三人の子どもたちの味わった痛みを描いた物語。痛くてちょっとつらい読書になるかもしれないけれど、読み進むほどに断片と断片がつながってきて、ページを繰る手が止められない面白さ。教科書では学べない歴史の一幕をぜひ味わってほしい。(星泉)
『折れざる槍』
ニコラ・グリフィス作、市田 泉訳、東京創元社
アーサー王のパーシヴァルの物語、主人公の性別が変わるとこうもふくらませて不思議で面白いものになるんだと目からウロコでした。自然の声を自在に聴き取る感覚は大人は忘れてしまってるもので、でも10代の方には小さい頃こういう風に風や動植物を感じたかもと思われるでしょうか。(Takako)
『怪盗ギャンビット1 若き“天才泥棒”たち』
ケイヴィオン・ルイス作、廣瀬麻微訳、KADOKAWA
こんなに面白い本を読まないなんてもったいない!!ドキドキしてハラハラして、夢中で読みました!夢中ってこれだ!!10代の皆さん絶対好きでしょう!?大人も大好きです!!(ぞうこ)
『ささやきの島』
フランシス・ハーディング作、エミリー・グラヴェット絵、児玉敦子訳、東京創元社
死者の魂を船に乗せて島へ送る仕事がある世界で、父を亡くした少年がそれをやりとげるまでを描くファンタジーにおいて、死も、死をめぐる人びとの行動も単純な善悪で語られることはないところに、作者の深い視線を感じました。
はっきりしたストーリーラインだけでなく、蛾の群れ、サルの手を持つ鳥、骨でできたアーチ……といった詩的イメージをも、横組みのレイアウトと繊細かつ大胆なイラストが効果的に伝えてくれます。(佐藤弓生)
『レベッカの見上げた空』
マシュー・フォックス作、堀川志野舞訳、静山社
北欧の冬世北欧の冬景色が目に浮かぶような幻想的で美しい物語でした。レベッカにあげたコートが見つかる場面は鳥肌がたちました。世代を超えた少女達の友情が切ないけれど羨ましくもありました。(無記名)
『七月の波をつかまえて』
ポール・モーシャー作、代田亜香子訳、岩波書店
明るいばかりの話では無いのに、
とてもみずみずしく爽やかなお話だった。
読んでいて何回か泣いてしまいました。(ふたの)
『ディア・マイ・シスター』
チェ・ジニョン作、すんみ訳、亜紀書房 性暴力がどのように心にダメージを与えるか、直接の加害者によってだけでなく、無理解な周囲による二次加害がどれだけ恐ろしいか。守り支えてくれる人すらも「失ってしまう」こと、加害者の方が被害者かのように扱われる不条理があること。厳しいテーマですが、10代にこそぜひ読んでほしい作品です。(大橋ケセラ)
『4 3 2 1』
ポール・オースター作、柴田元幸訳、新潮社
若い読者の皆さん、今こそ、現代アメリカ文学を代表する作家、ポール・オースターが紡いだ面白い物語に、少し背伸びして出会ってほしい。彼は昨年世を去ったけれど、ほぼ全作品を、最高の日本語訳で読むことができる。1947年に生まれたアーチボルト・ファーガソンは、同時進行で四人のアーチの人生に枝分かれし、それぞれが少年から青年へと成長してゆく。800頁88万字、分厚くてかっこいい本。『ムーン・パレス』も推し。(劉優貴子)
『命をつないだ路面電車』
テア・ランノ作、関口英子・山下愛純訳、小学館
イタリアの首都ローマ。第二次世界大戦中に起きた大規模なユダヤ人迫害事件の日、とっさに路面電車に逃げ込み命を長らえた少年の実話。
「ホロコースト」と一言で言っても国や地域によってこんなにも事情が違うんだ!という驚きがすごかった。電車の中というシチュエーションにハラハラし、家族との離別と再会に涙し、街の人たちの戦争に対する憤りと助け合いの心に胸が熱くなる。歴史を知るのに文学は最良だと思った一冊でした。(無記名)
『わたしの人生』
ダーチャ・マライーニ作、望月紀子訳、新潮社
戦時中の名古屋で、「敵国人」とされた人々を強制的に収容した施設があり、その中でここまで屈辱的で悲惨な生活を強いていたという歴史があったということは、あまり知られていないのではないしょうか。飢えをしのぐため、蟻や蛇を食べて生き延びたというダーチャ・マライーニさんの貴重な証言。ナチスに関しても言及されており、「アウシュヴィッツの小さな厩番」と合わせて読んで欲しいです。(はり)
『その子どもはなぜ、おかゆのなかで煮えているのか』
アグラヤ・ヴェテラニー作、松永美穂訳、河出書房新社
剥き出しの文章に赤裸々な体験はやがて読者を突き飛ばしてくる感覚に襲われます。突き飛ばされた果てで途方もない「現実」の恐ろしさ、滑稽さを教えてくれます。(Yuki)
『闇に願いを』
クリスティーナ・スーントーンヴァット作、こだまともこ・辻村万実訳、静山社
先が気になるワクワク感があり、読みやすく キャラクターに愛情も感じられました。差別 自由など現代の要素も取り入れつつ、希望があるお話でした。(ひらやま)
『アウシュヴィッツの小さな厩番』
ヘンリー・オースター/デクスター・フォード作、大沢章子訳、新潮社
ホロコーストを奇跡的に生き延びた少年の恐ろしく過酷な運命と、そこから自分の人生を取り戻すまでの軌跡の物語。傷ついた少年の心が、多くの人との関わりで、世界に寛容を訴えるようになるまでの終戦後のエピソードが感動的だった。本当に驚くことが次々と起こり、ページをめくる手が止まらない。10代から大人に勧めてほしい1冊。(はり)
『ラッキーボトル号の冒険』
クリス・ウォーメル作、柳井薫訳、徳間書店
少年が島で出会ったのは、自分の名前は忘れて「ロビンソン」と呼ぶように言う男!ふたりのやり取りにワクワクします。(無記名)
『スラムに水は流れない』
ヴァルシャ・バジャージ作、村上 利佳訳、あすなろ書房 実際のスラムの子どもたちのリアルな部分を少しだけ感じることができました。目に見える部分が全てではないと感じさせられました。(無記名)
『サメと救世主』
カワイ・ストロング・ウォッシュバーン作、日野原慶訳、書肆侃侃房
ハワイは楽園じゃなかった。(フレンチサラダ)
『コメディ・クイーン』
イェニー・ヤーゲルフェルト作、 ヘレンハルメ美穂訳、岩波書店
大切な人を亡くした時、悲しみへの対処は大人でも難しく、現実に向き合うまでに時間が必要な場合が多い。心理学者でもある作者が、重いテーマを児童文学で描くのを、最初のうちは興味深く読んでいた。ところが読み進めるうちに目が涙で霞み文字が読めなくなり、何度も中断してしまった。(無記名)
『おちゃめなパティ』
ジーン・ウェブスター作、三角和代訳、新潮社
自分とは全く違う環境にいて、全く違う生活をしている魅力的な女の子とのお話に夢をふくらませましたことを覚えています。(えみ)
『闇に願いを』
クリスティーナ・スーントーンヴァット作、こだまともこ・辻村万実訳、静山社
タイの雰囲気が目に浮かぶ一方でフィクションの設定部分もとても自然に想像できて、それら要素が合わさり、すーっと物語に引き込まれました。読みながら「正義」についていろいろな思いが自分の中に行き来し、大人でも楽しめる、余韻が残る作品でした。(無記名)
『少年の君』
玖月晞作、泉京鹿訳、新潮社
泣きます。(星野ひろか)
『死の森の犬たち』
アンソニー・マゴーワン作、尾﨑愛子訳、岩波書店
動物好きにはたまらない1冊!(無記名)
『七月の波をつかまえて』
ポール・モーシャー作、代田亜香子訳、岩波書店
ひと夏の思い出として、読者にいろいろなことを伝えてくれるでしょう。(無記名)
『ソリアを森へ』
チャン・グエン作、ジート・ズーン絵、杉田七重訳、鈴木出版
野生動物保護の活動に女の子が注ぐ並々ならぬ情熱に圧倒され、マレーグマの子との交流が胸を打つ。熱帯雨林の自然と動物たちの息吹を感じさせる絵も迫力で忘れられない。夢を叶える指針にもなるし、自然保護を改めて考えるきっかけにもなる作品である。子供から大人まで幅広い年齢の人々に手に取ってほしい。(無記名)
『スラムに水は流れない』
ヴァルシャ・バジャージ作、村上 利佳訳、あすなろ書房
カースト制度が残るインドで、貧富の差、水不足に苦しみ、次々と困難に見舞われながらも、希望を失うことなく前をむいていく少女の物語。現代インドの深刻な問題をとりあげつつ、教育やITが救いになることも示している。自分にできる方法で悪に立ち向かっていく主人公の姿がまぶしかった。(anya)
『理想の彼女だったなら』
メレディス・ルッソ作、佐々木楓訳、書肆侃侃房
うれしくなる場面もつらい場面もあるが、そのどれもが、自分と似た、あるいは同じものを抱える他の誰かとつながれるような感覚になれる。こんな小説を、10代の頃に読みたかった。
希望を感じられるのは、この小説そのものの力だけでなく、こんな物語が読める環境になったことだ。それほど、この小説の邦訳があることには価値がある。(佐々木楓)
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